toggle
2018-09-24

シンガポールに生きる女性たち:Crystal Lim(クリスタル・リム)さん

シンガポールで出会った様々な女性の生き方をご紹介するインタビュー”シンガポールで生きる女性たち”。

Crystal Lim(クリスタル・リム)さん 39歳 
シンガポール出身・シンガポール在住 
■職業・肩書き:Founer and CEO at Forest Wolf ■これまで住んだことのある国(都市):シンガポール・イギリス・オーストラリア ■話す言語:英語・中国語(北京語)・マレー語 それにフランス語・ドイツ語も少々 ■家族構成:最近再婚した旦那さまと以前の夫との間に二人の子ども

今回お話を伺ったのはCrystal Lim(クリスタル・リム)さん。シンガポールで生まれ育ち、大学はイギリスに留学。卒業後は投資銀行での仕事につきながらも、リーマンショックを期に金融業界を去り、家族でオーストラリアに移住、農場を買って自給自足の生活をしたことも。2児の出産と子育てを経て、富裕層向けのホリスティックなリトリートを運営する会社を設立。その後、あるきっかけからシンガポールのトップスクールであるシンガポール国立大学での新たな教育プログラムの立ち上げメンバーとしてアサインされることになりました。プライベートでは、仕事と夫婦生活や子どもを含めた家庭生活のバランスに悩んだことも。一度離婚を経験し、昨年新たなパートナーと結婚、そして彼とは公私共にパートナーとして新たに会社を立ち上げ、人生の新たなチャプターをスタートさせたクリスタルさん。彼女の人生のあらすじをざっと聞くだけでも、どれだけスーパーな女性なのかと思わされてしまいますが、その背景には彼女なりの葛藤や苦労、そしてその中で導き出した”生きたい人生を生きる”ヒントがつまっています。そんなクリスタルさんにお話をお伺いしました。

現在のお仕事のこと

Mana(インタビュアー):今日はお忙しい中お時間をいただきましてありがとうございます。まずは現在されているお仕事についてお聞かせいただけますでしょうか。

Crystal:今年、夫を共同創業者にForest Wolfという会社を立ち上げました。こちらの会社では、AIの技術やデジタル化が益々発達していく世界の流れの中で、人や組織が、人だからできる能力をいかに最大限に発揮して、将来が予想しづらい変化のスピードの早い世の中で価値を発揮できるようにしていくか、ということに特化したリーダーシップトレーニングや研修、マインドフルトレーニングを行う会社です。

Mana:クリスタルさんのお話を最初にイベントでお伺いした際、やっていらっしゃることが本当にこの世界の最先端の分野だと感じ、とても感銘を受けました。

Crystal:ありがとうございます。私自身の前職であるシンガポール国立大学で、来たる未来に備えた人材育成、大学生のソフトスキルを高め、より社会で通用する、変化の激しい世の中で生き残っていくことのできる人材育成を目的とした”Future Ready Program”のセンター立ち上げでの経験などもベースにして、こうしたソフトスキルのトレーニングもっとより多くの個人や民間組織で広めたいと考え、立ち上げた会社です。

Mana:シンガポール国立大学で取り組まれていたプロジェクトについても詳しくお聞かせいただけますでしょうか。

Crystal:”Future Ready Program”は、シンガポールのトップスクールであるシンガポール国立大学(NUS)の大きな課題意識から生まれたプロジェクトです。同校は学力というレベルではアジアトップ、そして世界でもトップランキングの上位に入る優秀と言われている大学です。昨今、大学では、生徒の大学卒業後の就職率や、就職した先の民間企業からのフィードバックが大学運営において大事に耳を傾けるようになっています。そこで、NUSの卒業生が就職した大手の民間企業から寄せられた声がありました。NUSの学生は、学力は高いし、言われたことはできる。でも自分から進んで何かを考えたり、行動したりするような力が弱く、実社会で”使えない人材”だ、というフィードバック。こうした声が多数寄せられ、NUSの学長をはじめ経営幹部は、これを解決する方法は何か、と思案していました。そうした状況に、ひょんなきっかけから私がそのプロジェクトを率いるリーダー候補として名前があがり、結果的に着任することになりました。

大きなキャリアチェンジ。そのきっかけは”宇宙に意図を送ったこと”

Mana:クリスタルさんご自身、もともとは金融業界ご出身、そしてそのあとはオーストラリアに移住されてホリスティックリトリートを運営する会社を経営されていたと伺いました。そこからシンガポール国立大学でのプロジェクトディレクターというのは、とても大きなキャリアチェンジだったのではないかと思います。どうしてそのキャリアチェンジが起こったのか、また起こしたのか、お聞かせいただけますでしょうか。

Crystal:ほんとにひょんな面白いきっかけでした。経営していた自身の会社のリトリートで、ブータンを訪れていた時、世界最大のエグゼクティブサーチファームエゴンゼンダのグローバルダイレクターとたまたまご一緒する機会があったんです。リトリートの参加者を含めて、みんなでブータンの山の中でメディテーションをしていたとき、そのダイレクターが話しかけてきました。「クリスタル、君のやっていることは素晴らしい。でも君の周りにいるのは”お年寄り”ばかりだ。こうしたプログラムを、もっと若い人に提供するといいと思う。若い人は、小さなきっかけを提供するだけでも、その先の人生が大きく変わる可能性を秘めているから。いまは『でもどうやって?』と思うかもしれない。それでも、自分自身が自分に誠実に、そして”宇宙”にその意図を放てば、”宇宙”はその道を用意してくれると思うよ。」と言われたんです。当時私が経営していた会社のリトリートプログラムは、クライアントの身体や心、マインド、そしてエネルギーを整えることを目的にしたホリスティックリトリートのスタイルで、参加費も高額だったので、参加者は多くがすでに仕事で成功された年配の経営者やリタイヤした高齢の方がほとんどでした。その後、言われた通り、私自身”宇宙”に意図を放って、それから2-3週間ぐらい経った頃でしたでしょうか。シンガポールのエゴンゼンダのコンサルタントから連絡がきました。私に紹介がしたい話がある、と。それが”宇宙(Universe)”が用意してくれた"大学(University)”での仕事だったんです。自分まさか大学で働くことになるとは思ってもいなかったので、とても驚きました。

22歳で突然”母”に。夫婦関係に悩んだ過去、離婚、そして再婚。

Mana:お仕事の話が続きましたが、クリスタルさんのプライベートについてもお話をお伺いさせてください。最近、お仕事のパートナーであり共同創業者であるグレッグさんと再婚され、新たな生活をスタートされたと伺いました。

Crystal:そうなんです。グレッグは、実はNUSで仕事をしていたときに一緒にプログラムを作っていたメンバーの一人でした。彼はクリニカルサイコセラピスト(医療心理療法士)の博士でNUSで教授をしていました。私自身は民間の世界でやってきた人間である一方、彼は学術、アカデミックな世界でキャリアを積んできた人です。私たちがコンビを組むことで、Forest Wolfが提供するサービスは、民間のニーズに根ざした一方で、学術的世界での立証やデータ的根拠を持ったプログラムを提供することが可能になっています。

Mana:まさにパーフェクトなコンビ&カップルですね。今回のご結婚は再婚だと伺いましたが、最初のご結婚についてもお伺いしてもよろしいでしょうか。

Crystal:はい、まったく構いません。最初の夫と出会ったのは私がまだ22歳だったとき。当時前の夫には、彼が離婚した前妻との間に3歳の子どもがいて、彼と一緒に暮らしていました。前の夫も金融業界、投資銀行の出身だったので、出張で各国を飛び回り、平日はほとんど家に帰らない生活。そんな中彼の3歳の息子はメイドさんと暮らしているような状態でした。彼と出会ってすぐにそんな状況を知って、その3歳の子どもがとても可哀想で。それで彼と出会っておつきあいをはじめて数ヶ月ごには彼の家に住み始めて、その3歳の子どものお世話を始めたんです。22歳でいきなり3歳の息子の母になったような感覚で、当時は周りの友人たちもまだまだ遊びたい年頃でパーティやディナーに忙しい状況でしたが、私はそんな友人たちを横目に、子どもの送り迎えやごはんをつくったり、といった生活をしていました。

Mana:その流れの中でご結婚されたということですね。

Crystal:はい、24歳の時に最初の結婚をしました。とても早い結婚だったと思います。前の夫と私は当時同じ投資銀行で働いていたということもあり、お互い忙しい中一緒に過ごす時間も多く作れず、またぶつかることも多々ありました。リーマンショックを機に二人とも業界を離れ、シンガポールで持っていた家や車などもすべて売り払ってオーストラリアで農場を買い自給自足のような生活もしてみました。その時わたしはちょうど彼との第一子を妊娠していたときだったこともあり、家族での時間を大事にして、自然の中でのんびり暮らすこれまでとはまったく違うライフスタイルを楽しんでいました。ただ、結婚をした時に私自身若かったこともあり、どこか埋まらない溝のようなものがありました。結果的に前の夫とはおつきあいしていた期間も含めると14年で、その関係を終わらせることにしました。

Mana:前のだんなさまとの間にお二人のお子さんがいらっしゃると伺いましたが、お子さんは今クリスタルさんと一緒に生活されているのでしょうか。

Crystal:子どもたちは、私との時間半分、そして前の夫との時間を半分で過ごしています。お互いに近くに住んでいるということもあって、学校への送り迎えなども引き続き代わる代わる協力してしています。

Mana:お子さんは、クリスタルさんがグレッグさんとお付き合いされたとき、また再婚されたとき、どんなリアクションでしたか。

Crystal:子どもたちとグレッグを最初に合わせたのは、一緒に北海道にスキー旅行に行った時でした。私も子供たちがどういうリアクションをするかなと思っていたのですが、結果的には子どもたちはすぐにグレッグと打ち解けて仲良くなりました。彼がとてもスキーが上手な人なので、子どもたちは「ママはホテルにいていいから、私たちはグレッグとスキーに行ってくる」と行って3人で出かけてしまったぐらい。彼自身心理学者で、子どもの心理を扱うことについてもプロフェッショナルの人なので、そういう意味で彼が子どもたちとコミュニケーションをとったり、関係を作っていくことがとても上手だったからかもしれません。

Mana:現在のパートナーであるグレッグさんとは、公私ともにパートナーということですが、何かお二人の関係をよくする、大切にする上で、大事にしていることや秘訣などはありますか。

Crystal:そうですね、1日の始めと終わりに二人でする習慣を決めています。朝はマインドフルネスの練習で、瞑想とヨガを一緒にした後、お互い今日はどんな1日にしたいかということをお互いに宣言し合うようにしています。そうしてお互いに1日をはじめます。それから夜も寝る前に習慣にしていることがあって。これは彼が決めたことなんですが、自然界の五大要素をインスピレーションに基づいて、夜散歩をすること(地の要素)、ベットルームに入ったら鐘を鳴らすこと(金属の要素)、これはここからは仕事の話はもうしない、という合図でもあります。バスルームでリラックスすること(水の要素)、ベットサイドにキャンドルを灯すこと(火の要素)、そして瞑想をしながら呼吸を整えること(風の要素)といったことを寝る前に一緒にする時間をつくっています。それから彼は、ベットルームでは携帯やパソコンなどは絶対に持ち込まないというポリシーなので、それもお互いに守るようにしています。仕事の場では、私自身も男性的なエネルギーを使ってどんどんこなしていく必要があることも多いです。でもプライベートでいる時は特に、意識して私自身女性的なエネルギーで彼に接するようにしています。そうすることで、彼もより男性らしさや彼の素敵な部分を発揮してくれると感じるので。

現在夢中になっていること、そしてこれからの挑戦。

Mana:今年のはじめNUSでの大役を退かれ、ご自身の会社を設立し、また公私とものパートナーとのご結婚、と今年は人生の中でもまた新たな章が幕開けした年だったのではないかと思います。現在とてもエキサイティングなこと、夢中になられていることはどんなことでしょうか。

Crystal:そうですね、一番エキサイティングなのは、やはり新しく始めた自分の会社、そしてビジネスのことだと思います。私たちの世代は、長い歴史のスパンで考えると、とても大きな転換点を経験している世代であると言えると思っています。インターネットやデジタルがなかった世界と、それが世界の中心として回っていくようになっている世界、その両方を知っている貴重な世代だと思うんです。過去にたばこが世の中に出てきた当時、当初たばこは体によい影響を与えるものとして、医師などからも推奨されていました。それが現在では身体を害するものだということがわかっています。それと同じで、現在私たちの生活になくてはならなくなっているインターネット、スマードフォン、そして様々なデジタルデバイスによるサービスが、本当の意味で私たちに良くも悪くも与えている影響は、もう少し先にならないとわからないだろうと感じています。またあるリサーチによれば、今後5年程度で病院から手術をする医師が必要なくなる、などとも言われています。機械が人間よりも正確でパフォーマンスのよい手術をできるようになる世界が目の前まできています。これまで人間がしてきたいろんな”仕事”が機械にとって代わられてしまおうとしている大きな時代の転換点の中で、人間のだからできることの可能性にかけたことを仕事にできるのは、とてもエキサイティングであり、大きなやりがいを感じます。

Mana:ビジネスやお仕事の観点で、今後の目標などはありますか。

Crystal:パートナーであるグレッグとともに、私たちのこれまでの取り組み、そして現在の取り組みをまとめた本を出せたらと思っています。この本の出版は、私自身とても楽しみにしていることのひとつです。

Mana:クリスタルさん、この度はお仕事のこと、そしてプライベートのことまでオープンにお話いただき、貴重なご機会をありがとうございました。これからもご活躍の様子をお伺いできることを楽しみにしています!

いかがでしたでしょうか。

Crystalさんのインタビューいかがでしたでしょうか。Crystalさんは、私が今年出会った人の中でお話を聞いて一番痺れた方でした。私自身が、個人的に最近関心を持っていた分野に最先端の取り組みをされている方ということもあり、お話を伺っていて、何度も鳥肌が立ちました(笑)。

先日、クリスタルさんにお誘いいただいて参加したシンガポール・カペラホテルでのリトリートにて

Crystalさんが優秀な方であることは言うまでもなく、Crystalさんのお話を聞いても「私とは違う世界の人だ」「彼女だからできたんだ」と思ってしまう人も多いかもしれません。一方で、彼女が人生の中で何度も自分をある意味”リセット”するタイミングがあり、そのたびに新たな自分の姿をつくってきたというお話は、人生の中でいままさに大きな”リセット”そして新たな自分をつくっていくタイミングにある私にとってはとても力づけられ、インスピレーションをいただきました。目の前の人生を一生懸命生きながら、節目に当たった時には、”宇宙”に意図を放って新たな自分で生きる道を”宇宙に導いてもらう。そんなクリスタルさんの生き方と考え方は、これからの長い人生の中で、なにか岐路に立つ度に私の中で大きな指針になってくれそうです。

インタビュアー・文責:小川麻奈(Girls Bee代表)

 

Girls Bee Onlineでは、国籍や民族、育った環境など日本人とは異なるバックグラウンドを持った女性たちが、どんなことを考えて、どんな生き方を選んでいるのか、インタビューを通してお伝えしていきます。これを読んでくださっているたくさんの可能性をもった日本の女性のみなさんに、何か感じてもらい、それぞれの人生に取り入れられるよい部分を見つけてもらえたら、とても嬉しく思います。ご意見・ご感想等ありましたら、ぜひコメント欄もしくはメールでお知らせください。またGirls Bee Onlineではオンライン記事の寄稿等ビジネスコラボレーションも受け付けています。ご連絡は下記emailまで。(Contact: girlsbee2010@gmail.com)

 

Pocket

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です